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沢田準【競馬を楽しく】
配信日:2016/02/12 13:45

インタビュー記事◆沢田準の競馬を楽しく

私の書棚に「赤木駿介のジョッキー分析 騎手の世界(関東編)」という書籍がある。昭和47年発行だからハイセイコーによる第一次競馬ブーム前という古いものだ。

この書籍を購入したのはその題名や内容に特に興味を持ったというより、競馬関係の書籍がほとんど書店では見られなかったという理由が大きかったに違いない。

競馬関係の書籍といえばほとんどが馬券物、それも穴を当てようというものばかりであり、競馬ファンになって日が浅くまだ若かった私は競馬に対する知識に飢えていた。

競馬関係の書籍なら馬券物以外なら何でも購入していたのである。さすがにまやかしの匂いが強い馬券物を手にすることはなかったが。

この書籍は現在はなくなってしまった競馬専門紙の「馬」が発行していた週刊「馬」の表紙に騎手の写真を取り上げ、記事としてその騎手に対しての赤木氏のインタビューを掲載した。

そのインタビューをまとめて書籍にしたものである。昭和43年春から約2年に渡った連載であり、週刊「馬」は関東で発行された週刊誌であるため関東の騎手に限られている。

なおインタビュアーであり著者である赤木駿介氏は人気の競馬評論家でフジテレビの競馬中継の解説者でもあった。また「データの赤木」というキャッチフレーズで知られていた。

現在では競馬を考えるうえでデータを利用することは至極当然だが、当時はデータを使うことが珍しいことだったことがわかるのである。

このインタビューは関東の騎手89人に対して行われている。昭和44年デビューの騎手に45年デビューで成績一位の東信二騎手を加えたもので、当時の関東の全騎手ではないがかなりの比率の騎手に対してのものだ。

今回この赤木氏の著書を取り上げたのはこのインタビューが、現在いろいろなメディアで取り上げられるインタビュー記事と違うものが感じられるためである。

赤木氏のインタビューは関東の多くの騎手に対してのものだ。この中には当時のトップジョッキーだった野平祐二騎手、加賀武見騎手、郷原洋行騎手などがいるが、逆に実績を上げられずほとんど無名のまま終わってしまった騎手もいる。

興味深いのはあまり活躍できていない騎手についてのものだ。当然ながら華々しい話は聞くことができない。また活躍している騎手であっても失敗話はある。

騎乗していた馬から有名騎手に乗り換えられた悔しい話、騎乗ミスで負けた話、落馬した話、逆に落馬させてしまったこと、レース中に他の騎手から怒られたこと、体重の重い騎手の減量の苦労話。

またファンからバカヤローと言われたこと、レースが終わって調教師から怒られたこと、他の騎手とのレース中のやりとり、その他ファンが知りたい話をたくさん引き出しているのである。

一方現在のインタビュー記事は主要レースを勝ったばかりの騎手や厩舎関係者に対するものがほとんどだ。そうなると成功話ばかりになってしまう。

その結果どの記事も似たようなものになってしまうし、ファンが本当に聞きたいようなことが表れてこないのである。

また赤木氏のインタビューでは、散漫になることを防ぐために質問も回答もです調をやめて短く切っている。

赤木氏は騎手が生意気な答え方とか赤木氏がぞんざいな口調だと受け取らないでほしいと書かれているが、たしかに簡潔で読みやすい。

ところが現在のものはそのような配慮はなく、なかには乗せていただいた、勝たせていただいた、などの連発で実に読みにくい記事まである始末だ。




◆沢田準【競馬を楽しく】
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